先日、角田光代さんの「旅する本」という短編を読みました。古本屋に売った自分の本と外国の旅先で何度か出会うという話です。本に再会し、読んでみると新しいことに気が付いたり、まったく別の雰囲気を持ったりする。そのことはとりもなおさず、いろんなことを自分が経験し、自分が変わってることに他ならない。
これは音楽にも言えると思いました。
先日の演奏会では2曲歌いました。ひとつはラターの曲です。高らかに神をたたえるという感じの出だしで始まりますが、練習を始めた頃は、あまり好きではありませんでした。もっと、短調のゆっくりとした曲想のほうが好きでした。
癌の宣告。もう、歌なんかどうでもいいと思いました。一年先はどうなっているかわからない。音楽も聞かなくなりました。
病状もだんだん明らかになり、初期のがんだとわかったとき、このラターの曲をふとききました。その時、歌えると感じました。もし、無事、手術が終わったら、自分がもとの生活にもどれたら、この喜びを表現したいと思いました。この曲を歌いたいと思いました。
以前にも書きましたが、最近、バロックの軽快さがたまらなくいい。ロマンチックで朗々とした曲よりもリズミカルで軽やかなところがいい。朝日の中で聞ける曲がいい。今を精一杯謳歌できる曲がいい。
経験が好みを変えたんだと思います。いままで、気付かなかった良さを見出せたのだと思います。
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