ニュートリノ振動を初めて観測し、ノーベル賞候補といわれていた戸塚先生の癌の闘病ブログが出版されていたので読みました。戸塚先生は小柴先生のお弟子さんです。
2000年に大腸がんで手術、その後、肺、肝臓、骨、脳に転移、2008年他界されました。そのブログは亡くなられる一週間前まで続いています。
他のがん患者さんのために、病気の進展具合、治療、副作用についてきめ細かく記録されています。薬物の効果があっても、副作用のために中断せざるを得なくなる。その後、どうなるのか。誰に聞いてもわからない。自分の例を克明に記録されています。
無くなられる一二ヶ月のブログは戸塚先生の一生の総括みたいに読めました。明快に生き方みたいなものがのべられていました。
印象的だったのは死への恐怖についての気付き
・自分が消滅しても世界は何事も無く進んでゆく
・自分が存在したことは時間とともに消えてゆく
・自分が消滅した後のことは絶対垣間見ることはできない。
こういった恐怖のなか、残りの人生をどう生きるかをいつもいつも考えられていた。
それ克服するためいろんなことを考え実行されている。生きることは修行である。宗教を信じない科学者が仏教に興味を持つ。古代仏教は他力本願ではなく、みずから、悟りを開く修行である。
なかなか難しいのが奥さんに愚痴をこぼし、精神的に追い詰めてしまうこと。これを克服したいと思われていた。
最後のほうに正岡子規の言葉を引用されている。
「悟りとはいふ事はいかなる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違いで、悟りということはいかなる場合にも平気で生きて居ることであった」
副作用や痛みと闘いながら常に生きることを考えられていた。
「コチョウランが満開になった。ランというのは花の咲いている時間が長い草。当分楽しめそうだ。部屋を華やかにしてくれる」。 とてもおだやかな文章。
このブログを最後に入院、一週間後になくなられた。最後のブログはとても辞世のブログとは思えない。まだ、まだ、このまま生活を続けるといった趣の文でした。
10日ほど前、6月15日のPhysicsworld .comにEvidence mounts for previously unseen neutrino oscillationという記事が出ていた。これは日本のT2K(Tokai to Kamiokande)実験で、東海村のJ-PARK(巨大な加速器の複合体)でニュートリノを発生させ、小柴先生のノーベル賞となった観測が行われた飛騨のカミオカンデでニュートリノを検出する実験です。このJ-PARKを推進されていたのが戸塚先生で、成り行きを楽しみにされているのが読んでいてわかりました。今はいろんな人が後をついでやっておられ世界的な成果を生み出しています。
最初にこう書いてられます。「Old soldiers never die; they just fade away。古い世代は自己の痕跡を残さずに消えさるべきなのです。」
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